長く不況の中、取引を拡大し売上を伸ばすには、顧客の声をよく聞けるツール、それが『電話』だ。電話をうまく使いこなせれば、顧客の声を吸い上げ、隠れたニーズを発見することすら可能になる。電話とパソコンなどのIT(情報技術)ツールを組み合わせれば、顧客の対応の大きな助けになる。電話にもう一度目を向けてみよう。
「顧客を大切にしよう」「顧客のニーズをつかもう」企業の”顧客志向”は強まる一方だ。いかにして顧客のニーズを探り、顧客が欲しいと思うような商品やサービスを提供できるか。消費者向けの事業を営む企業だけでなく、企業間の取引でも顧客だけでなく、企業間の取引でも顧客の要望に即座に対応できる体制作りや、顧客の隠れた声を聞きだす戦略に知恵を絞る、企業は多い。 電子メールやホームページを通じて、顧客との接点を増やそうと努力する企業も増えている。 でもちょっと待って欲しい。
あなたの会社では、顧客とのもっとも身近な接点を大事にしているだろうか。それは「電話」だ。
連絡や問い合わせ受発注など大抵の企業では電話を通じて顧客と接しているはずだ。電子メールやホームページを使った連絡や取引はひろまりつつあるが、すべてのやり取りがそれで済むようになるのはまだまだ先の話だろう。電話は、これからも使われ続ける。
商品に関する問い合わせやクレームなど様々な情報を、顧客は電話を通じて企業に発信している。電話を上手に使いこなせれば、顧客対応力を高められるばかりか、顧客のニーズを吸い上げることすら可能になるはずだ。
電話で注文を受ける社員が、顧客の相談に親身に乗っている。
お客様からの要望を聞くと、パソコンで過去の販売履歴を見ながら、提案する。その効果で新規顧客の5割が継続して購入するという。
ビルや店舗の清掃を請け負う企業では、清掃中のクレームを受けると、社長を含む責任者全員に一斉に連絡が飛ぶようにした。即座に責任者が現地に行って直接誤ると、「すぐに来てくれとは良い会社だ」と逆に評価され、ほかの顧客を紹介してもらう事も多いという。
対応ミスで顧客を失う
「電話を上手に使いこなす」
以前に、注意しなくてはいけないことがある。電話対応のまずさで顧客との関係を悪くしているケースが多いことだ。あなたの会社ではこんなことはないだろうか。
① 最初に電話に出た社員が、顧客の名前を聞き取れず何度も聞きなおす。または聞き間違えたまま担当者に回す。
② 問い合わせなどの電話を受けたとき、適切な担当者につなげない。または複数の社員をたらい回しにする。
③ 問い合わせにその場で答えられない。「折り返します」と言っても長い時間がかかる。
④ 緊急を要するクレームの電話でも、担当者が不在だと対応できずトラブルが深刻化する。
⑤ 電話が立て込んでいる、または社内や部署にだれもいないため、電話がかかってきても取らない。取れない。
以前なら「感じが悪いな」と思われるくらいで済んでいたかもしれない対応ミスも、最近では取引打ち切りという事態に結びつきかねない。買いたい顧客は少なく、売り手は多い。顧客が必要としている瞬間に答えられなければ、他社に乗り換えられてしまう。こんなリスクが常に潜んでいる。
もっとも深刻な結果につながるのはクレームの電話だろう。クレームを受けたのに誰も反応しない。もしくは担当者が責任者に伝えず、適当な対応で済ましていると、「誠意のない会社」というレッテルを貼られる。その顧客との関係が悪化するのはもとより、周囲に悪評をひろめられてしまうリスクすらある。
個人の力では賄いきれない
電話を活かす会社と生かせない会社。その分かれ目はどこにあるのか。その一つの答えは「最新ITツールと電話をうまく組み合わせられるかどうか」にあります。その前にもう少し考えてみよう。
電話の対応はそもそも“人”に依存したものだ。 入社当事にまず電話の応対マナーを習った人は多いだろう。電話を受けたらあいさつし、相手名前や誰への電話かを聞いて担当者に取り次ぐ。しかし実際の業務の中では「声が聞き取りにくい」、「漠然とした問い合わせで誰に取り次げば良いかわからない」、そして「クレームで激怒している」などあらゆる“定型外”の電話がかかってくる。こういった電話への対応を重ねるうちに個人のノウハウが貯蓄され、応対のコツがわかっていく。
しかしそこにたどり着くまでには、時間がかかる。変化も競争も激しいこの時代、より効率よく電話応対のコツを会得したい。
これを実現するには、個人任せにせず会社として電話に対応する姿勢が必要だ。まず電話から入ってくる情報の“道筋”を付ける。問い合わせや受注、あるいはクレームといった電話の種類に応じて、だれにつないでどう処理するかを決め、ルールを作るのだ。
個人に依存した電話応対から脱却するためには、もう一つの重要なポイントがある。顧客や取引の内容に関する情報を、だれもがわかるようにしておくことだ。「顧客の社名は会社で管理していても、窓口となる社員の名前や最新の取引の状況は担当者でないとわからない」と言う状況では、個人依存の電話対応からいつまでも抜け出せない。
社員一人ひとりが抱え込んでいた顧客に関する情報をオープンにし、「自分の会社のお客様」として全員で共有できるようになれば、電話応対力の向上に大いに役立つ。さらに、いったん顧客情報を共有できる体制を作れば、営業やサポートなど様々な業務で顧客と接した履歴を貯蓄していくこともできる。
このように顧客に関する情報を統合管理する経営手法は、CRM(カスタマ・リレーションニップ・マネジメント)と呼ばれる。しかし各社員がバラバラに抱える情報を集めるだけでも手間がかかるため、明確なメリットがないと取りかかりにくい。「電話対応力の向上」というはっきりした目標があれば、始めの一歩も踏み出しやすい。
ITツールで電話を強化
電話応対の道筋を決め、顧客についての情報を共有する。この土台ができれば高感度応対への道は近い。ここであと一押しするのが、電話応対を支援するITツールだ。
まず顧客情報をデータベース化し、パソコンから検索できるようにすれば、過去の取引履歴を参照できる。「いつものあれ、お願い」といった依頼に”ツーカー”で答えることもできる。
さらに「CTI(コンピューター テレフォニー インテグレーション)ソフト」を使えば、電話に表示された顧客の電話番号で誰からの電話かわかるので、名前を聞きクレームなどに即座に対応するのに役立つ。電話での会話内容をグループウェアに登録すれば、営業担当者などが顧客と会う時の助けにもなる。